2010年6月26日土曜日

波打ち際のほたる

今日、仕事先で
「蛍みましたか?」
そう聞かれた。
気がつけばもう、蛍の季節か・・・
そう思い
「いや、まだだよ。もう見れるの?」
そう聞くと
「はい!たくさんいましたよ」
そう返事がかえってきた。
 
日々の慌ただしさで、ついつい四季を感じること忘れてしまう。
 
蛍の季節を感じるとつい思い出してしまうことがある。
あの小雨の中、傘をさして蛍を探していた少女は
蛍を見つけることができたんだろうか??
遠い遠い昔の記憶である。
 
暗闇のなか淡く光る蛍を求めていったりきたり。
長靴と傘。一見雨対策はばっちりで隙がないように思えたが
少し薄着すぎたようだ。
腕が雨で濡れ、寒そうである。
それでも、少女は蛍をさがす。
真っ暗な闇に少しの光を求めて。
 
まるで、暗闇という迷路に迷い込んだようだった。
だけど、少女の瞳は輝いていた。
蛍を見たいという、期待と希望に。
 
その瞳をみた僕は、少し安心してその場を後にした。
たとえ、迷路に迷ってもこの子なら大丈夫だろう。
そう確信して。
 
次の日も、次の日も、同じ道を通って帰ったが
少女を見つけることはできなかった。
時間帯も少しずらしてみたのだが、その後少女に会えることはなかった。
 
はたして、少女は蛍を見ることができたのだろうか?
結局確認することはできなかったけど、
僕は確信している。
少女は蛍を見ることができたんだと。
だから、その後会うことがなかったんだと・・・そんな気がしてならない。
 
この暗闇の迷路で迷うことなく、光を見つけ
そこにたどり着くことができる。
少女の大きな瞳は、まっすぐと光あるほうを見つめていたから・・・。




                    『蛍』

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