お会計980円になります。
1000円お預かりします。
20円のお返しです。
そういって、お客様の掌にお釣りをのせる。
そうやって、さまざまな掌にお釣りをかえしていく。
もちろん十人十色で女性らしい手、幼い手、しわしわの手
細い手、それぞれである。
だけど、いろんな掌の中でたまにゴツイ手にであう。
それは、男の掌である。
ワタクシは昔からよく言われるのですが、何もしない綺麗な手だと。
豆跡もなく、皮も厚くない、家事手伝いをいっさいしない手だと。
そんな掌とは真逆の掌を見つけることがある。
それが男の掌である。
だいたいが、もういい歳のおじさんである。
一昔前でいう、一家の大黒柱てきな感じで
この腕1つで家族を養ってきたんだ!そんな感じのおじさんである。
カドはけしてなく、穏やかなオーラさえまとっている。
まさしく、父の掌である。
お釣りを渡すと、厚みがあり、皮がごつごつとしている。
ワタクシとは真逆な掌。
幼少期のワタクシはやたら父の仕事帰りの手の匂いがすきで
よく、父の掌を手にとり匂いをかいでいたのを覚えている。
そんな怪しい行動をとるわが子を父はどう思っていたのだろうか?
けして、おおくは語らず、かといって寡黙ではない。
我慢強く、病院ぎらい。
いつも、我が子を心配をしていたと母は言うが
それすらも、あまり子供のまえではださなかった。
少し不器用なタイプだったのだと思う。
手先が器用で、絵がうまく、文系かとおもいきや
山登りをしたりもしていたらしい。
そして、父の一番の自慢は、バスケットだった。
かなりうまかったらしく、北信越大会(たぶん)の決勝で
試合終了の笛と共に
父がうったシュートはリングの外側をゆっくり
まわりそして落ちたと・・・それが入っていれば
逆転だった!
この話は幾度となく聞かされた。
なによりもその時期は父最高のモテ期だったらしく
女の人を棒で振り払って歩いていたと・・・
そう嬉しそうに話す父の横顔をいまでもおもいだすことができる。
永明(今で言う茅野高)の7番(背番号)といえば知らない人はいなかった!!
そう父は語っていたが、ワタクシはそんな父のバスケ姿も
写真も見たことがなかった。
あとは写真がすきで、MAMIYAとかいうメーカーの
2眼レフカメラを使いよく我々姉弟の写真をとっていたらしい。
実際のところ、覚えていないのが事実で気がついたときには
オブジェと化していた。
確かに思い返せば、カメラを構えたへんなトロフィー
が家にはごろごろ転がっており、よくそれを落としては
台座と先端部分が二つに割れて困ったあげく
そのまま放置していた。
だけど、不思議と怒られた記憶はない。
蛙の子は蛙。
手先の器用さや絵のうまさは姉に引き継がれたが
ワタクシもやはりバスケを多少やり、へたくそなりに
バスケは好きだった。
そして、気がつけばここ近年カメラを毎日持ち歩いている
自分がいる。
細かいことまでわからないが、カメラで空間を切り取る。
そういうことが好きらしい。
さらに、さらにと、掘り下げられないのはきっと
ワタクシには母の血が半分混ざっているからだろう。
今になってみると、父にはいろいろ聞きたいことが
たくさんあるがそれはもうかなわなくなってしまった。
カメラのこと、父が昔大好きだった母以外の女性のこと。
バスケのこと、掌の匂いをかぐ我が子のこと。
どう、思ったのだろう?
そして、もう1つ。
後になって、鮮明に父の表情を思い出したんだけど、
ワタクシはある程度歳を重ねてから、父の前で1度だけ
大泣きをしたことがある。
あの時の父の顔は、困ったようなせつないような
そんな顔をしていた。
我が子にかける言葉見つからず・・・そんなところ
だろうか??
あのとき、なにを思ったのだろうか?
やはり、言葉として聞くことはできないけれど
今は少しずつ育つ命を前に、父に無事を願うばかりだ。
病院嫌いが後に祟ったのか、父を亡くしてから
早3年が経とうとしている。
僕も32の歳になる。
父が結婚したかしないかくらいの歳である。
いつの間にか子は父になり、毎日を生きている。
父のバスケ姿は見れなかったので、ワタクシの大好きな
スケートボード姿は子の記憶に残してやろう!
そう考える日々である。
いつの日かうまいことだけがすべてじゃない!
好きなことには、心が輝くんだ、煌くんだ!!
それを伝えてあげたいと思う。
写真ではなく、記憶として。
父の遺品を整理していると、意外にもバスケットの
写真がでてきた。
あぁ、マジでやってたんだなスゲーじゃん!
そう感動にひたるまもなく、合わせて出てきたのは
女性の写真・・・
父よ。語りつくせぬことでいっぱいだ。
蛙の子は蛙。
いつかワタクシも写真好きということで、女性の写真でも
残して逝きたいところです。笑
ちなみに今日仕事をしていると、見知らぬ人に声をかけられた。
きけば、父の知り合いというではないか!
こんな文章を書いたあとだったので、タイミングにビックリでした。
人と人の出会いの縁、タイミングおもしろいですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿